デジタルテレビ

テレビとPCモニタは構造としては共通部分が多く、特に映像表示の仕組みは同じで、古くはブラウン管、2017年現在ではLCDが主流。たとえば NEC PC-8001 が発売された1979年当時は、一般的なテレビよりも高精細に表示できる専用モニタ(もちろんブラウン管)はたいへん高価であったため、テレビで代用することが一般的でした。RFモジュールを介して、空いている放送チャネルの周波数に割り込むという大胆なやり方で。余談ですが、このとき関東圏では、NHK総合の1番、NHK教育の3番の間で空いていた2番チャネルの周波数を使うことが多かったため、これが後の「2ちゃんねる」の命名ネタになりましたね。

同時期にビデオデッキなどAV装置の普及が始まり、テレビはそれらの入力端子を装備し始めますが、まだ放送波自体もアナログ、その映像を記録・再生するメディアもアナログ信号、つまり入力端子もRCAピンやS端子などのアナログ端子だけで、そもそもテレビ自身も(PC専用モニタでさえも)プロセッサを持たないアナログ装置。PCのデジタル情報をモニタに表示する場合は、PC側でD/A変換するしかなかった時代です。

後にデジタル放送が始まって、テレビ装置側にもプロセッサが搭載されると、PCからのデジタル信号を直接受けることが容易になり、テレビにPC入力端子を追加するパターン(A)、あるいはPCモニタにTVチューナを追加するパターン(B)、いずれかのアプローチで、1台でどちらの用途にも使える製品を考えるのは自然な流れといえます。

かつてはA,Bパターンとも様々な製品で賑わっていましたが、2017年時点ではすでにBパターンの製品(まだ稼働している例)は製造終了になっています。理由はいろいろですが、テレビ放送のデジタル化とともに、40型以上で動画中心、画像処理チップの高性能化が求められるようになったテレビに対し、30型以下で静止画中心、PC側で処理済のデータを表示するだけで済むPCモニタというトレンドの違いがはっきりしてきた、つまり共通部分が少なくなったというのが大きいでしょう。

そんな中で唯一生き残っているのが、Aパターンの中の、1人用の小さいテレビです。中でも、24型以下で D-sub 15pin とHDMIの入力端子を持ち、イマドキのフルHD解像度(1920×1080)のパネルを採用しているものとなると、事実上 SHARP AQUOS のKシリーズだけ、その中でも22型モデル(パネルは21.5インチ)だけになってしまいました。

子供のPC環境を用意する際に、PC本体は拠点間(まだ言うか)の配置転換で捻出できましたが、モニタは余っていなかったので、どうせならテレビも映るタイプにするかと、まずは2011年にLC-22K5を、さらに2015年にLC-22K30を入手。以来、なんとなくこのシリーズの新製品をチェックしているので、軽くまとめてみます。

SHARP AQUOS 22Kシリーズ

型番発売年月パネルサイズ(W×H)mmチューナUSB-HDD録画
(LC-22P1)
※Kシリーズではないため参考
2007-11VA(ASV)570×448アナログ×1
デジタル×1
LC-22K32010-06TN536×373アナログ×1
デジタル×1
LC-22K52011-02TN535×382アナログ×1
デジタル×1
LC-22K72012-02TN535×382デジタル×1
(LC-22K9)
※フルHDではないため参考
2013-04VA519×365デジタル×1○ レコロング対応
LC-22K902013-10TN519×365デジタル×1○ レコロング対応
LC-22K202014-08TN519×365デジタル×1○ レコロング対応
LC-22K302015-07VA508×361デジタル×2○ レコロング対応
LC-22K402016-08VA508×361デジタル×2○ レコロング対応
LC-22K452017-04VA508×361デジタル×2○ レコロング対応
2T-C22AD2018-08VA508×361デジタル×2
2T-C22DE2021-01VA508×332デジタル×2

2013年のK9はフルHDではなくHD(1366×768)でVAパネル、その半年後にK7と同じフルHDでTNパネルのK90が登場するという少しイレギュラーなパターンでした。K9ラインの22インチで横1366ドットというのは、PCモニタとして使うには中途半端なので、あまり売れなかったんじゃないかなー。

この影響だと思いますが、K90以降で新型の発表時期が春から秋に変わっています。そして今年はそれを元に戻すかのように、K45というこれまたイレギュラーな型番(2桁型番の一の位が0でない)のものが、K40からわずか8か月後にほとんど同じスペックのまま登場。会社が経営再建中という事情も相まって、なかなか興味深い動きです。もしかしたら次のK50(予想)は大きなモデルチェンジになるのかもしれません。

ちなみに、2007年当時のLC-22P1の価格は14万円前後、2017年4月時点のLC-22K40の価格は3万円弱。買う側としてはありがたいですが、作る側はこれでは厳しいですのう…。なお型番の由来は、Pライン, Kラインとも一人部屋向けというところから推測するに、順に Personal, Kojin といったところでしょうか。

うちにある2台のKシリーズのLCDパネルは、視野角のスペックから、K5がTN、K30がVAと思われます。一般的にTNよりVAのほうが見やすいはずが、この2モデルでは必ずしもそうとも言えず、テレビとしてはともかくPCモニタとしてはむしろK5のほうが少し画質が良いぐらいです。とはいえこれは、LCDパネル単体ではなく、バックライトの品質や映像処理エンジンの性能にも大きく影響される部分ではあります。

そんなわけで、22K30(K40,K45も同じはず)はホントにVAタイプのパネルなのか、やや怪しんでみたり。かといってTNパネルというわけでもなさそうなので、ちょっと調べてみるか…。

(2017-Apr-20追記) panelook.com や lcds-panel.com というLCDパネルの在庫情報が集まっているサイトを見つけたので、21.5インチ+VAタイプ+フルHDで絞ってぐりぐり見てみると、視野角176度で、さらに2015年より前に量産が始まっているものは M215HJJ-L30 Rev.B1 だけ。このパネルのベンダはSHARPと同じFOXCONNグループのInnoluxなので、22K30の中身はおそらくこれでしょう。疑ってしまいましたが、VAパネルということは間違いなさそうです。(まあ、分解してみればすぐわかる話ではあるのですけれども…)

(2023-Jul-07追記) K45の次は型番の系列が一新され、ADライン→DEラインとなっていたのでそれを表に追記しました。2023年に入ってDEラインから22インチモデルだけが生産終了となりました。もしかしたら新しい製品ライン(EF1?)で復活するかもしれませんが、現時点ではこの系譜が途絶えた状態になりました。

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