ソプラノリコーダー
素朴な音色で、発音もしやすいことから、日本の学校現場でも採用されて久しいリコーダーですが、小学校の三年生ぐらいで最初に使うソプラノリコーダーは、ジャーマン式運指のものが採用されていることがほとんど(2018年現在)です。
ソプラノ以外のリコーダーにはバロック式しか無いため、中学校でアルトリコーダーを使う段になって、キーがFになることと同時にその部分(移動ドでいうとファとファ♯)の運指が異なることで、一層混乱を招いているように思えます。
ジャーマン式システムは、♯や♭音の運指が不自然であり、つまるところシステム自体の音程バランスがあまり良くないので、個人的には最初からバロック式のソプラノを使ったほうがいいと思っています。しかしご多聞に漏れず、子供たちが通う学校からの指定がジャーマン式ですから、仕方なくジャーマン式ソプラノを購入しています。
このことが、バロック式とジャーマン式が並存することになった時代背景などを知るきっかけとなったりして、そこから好奇心をくすぐられたりして、子供たちの視野がさらに広がったりするかもしれないという淡い期待を(無理矢理)抱きながら…。
最初に覚えるハ長調の全音階において、いわゆるクロスフィンガリングをせずに、下からドレミファソラシまで自然な運指で出せることから、ジャーマン式運指は子供の教育用として優れているという見解は、たしかに判ります。半音を出しにくい等の短所よりも、この長所を選択したということでしょう。一方で、アルトではジャーマン式の長所はゼロになります。リコーダーの楽譜は移調譜ではなく、F管のアルトも in C の譜面を見て演奏しますので、譜面上のドはCで、アルトではソの指。つまり譜面上のシは、アルトではファ♯の指になり、バロック式運指のほうが自然になります。
ジャーマン式ソプラノは、ほぼ小学校専用モデルですから、国内リコーダー4大メーカーが出しているラインナップには、ABS樹脂、いわゆるプラスチック製の非常に安い価格帯のものしかありません。だいたい1200〜2000円程度ですが、さらに安い(400円前後)中国製のものもあります。高くても2000円前後ですから、ここはケチるところではなく、各メーカーのジャーマン式の中で最上級のものを選んでおくのが正解でしょう。
国内4メーカーが製造しているジャーマン式ソプラノの最上級モデルをまとめました。
ジャーマン式リコーダー
音域[キー] | ブランド | 型番 | 運指 | 全長(mm) | 重量(g) | 標準価格(円) |
---|---|---|---|---|---|---|
ソプラノ[C] | AULOS | 502B | German | 332 | 91 | 2100 |
ソプラノ[C] | SUZUKI | SRG-430 | German | 320 | 99 | 2100 |
ソプラノ[C] | YAMAHA | YRS-401 | German | 323 | 95 | 2100 |
ソプラノ[C] | ZEN-ON | 130G | German | 328 | 85 | 1800 |
うちの三姉妹用に取り揃えてみましたが、吹き比べた結果、長女は ZEN-ON 130G を選定。今も使用中です。さて今後、次女および三女はどれを選ぶか。三女のときに一択にならないように、多めに揃えておくことがポイントです。(決して何かを正当化しようとしているわけではありません)
この中でスズキのPLUMAシリーズは少し特殊で、トーンホールの間隔が狭く、ホール自体の径も小さく、手の小さい子供に合わせた仕様になっています。トーンホールに合わせて管径も全長も少し小さいため、本体も軽い(下位モデルは76g)のですが、SRG-430/SRE-530 だけは比重の高い樹脂を採用しており、こちらは他のメーカーのものより重い99gです。指かけ等は付属しておらず、純粋にリコーダー本体だけの重さです。重い分だけ音に芯があります。
ヤマハの400番台も同様に重めの素材-東レの「エコディア」を採用しており、付属の指かけパーツを含めて97g、本体のみで95gです。こちらも密度の高い音色が出ます。
これら上位モデルとは較べるまでもありませんが、400円ぐらいの安物リコーダー(ほぼ中国製)は、全く鳴らず、音程も悪く、継手部分の精度も悪い、未就学児向けの楽器(おもちゃ)です。小学生とはいえ、三年生以降の音楽教育に使えるレベルではありません。
ついでですが、より一般的なバロック式の最上級モデル(ただし樹脂製の中で)はこちら。中学校で使うアルトはここから選択することになるでしょう。
バロック式リコーダー
音域[キー] | ブランド | 型番 | 運指 | 全長(mm) | 重量(g) | 標準価格(円) |
---|---|---|---|---|---|---|
ソプラノ[C] | AULOS | 503B | Baroque | 332 | 91 | 2100 |
ソプラノ[C] | SUZUKI | SRE-530 | Baroque | 320 | 99 | 2100 |
ソプラノ[C] | YAMAHA | YRS-402B | Baroque | 323 | 95 | 2100 |
ソプラノ[C] | ZEN-ON | 150BN | Baroque | 88 | 2100 | |
アルト[F] | AULOS | 509B | Baroque | 473 | 216 | 3100 |
アルト[F] | SUZUKI | ARE-711 | Baroque | 468 | 212 | 2500 |
アルト[F] | YAMAHA | YRA-402B | Baroque | 470 | 220 | 3200 |
アルト[F] | ZEN-ON | G-1A | Baroque | 190 | 3200 |
低音スキーの私は、中学生のときに代表4人でリコーダーアンサンブルをやることになった際に、バスリコーダー(F管)を担当したことがあります。これは樹脂ではなく木製で、トーンホールの間隔が広いため、遠いところは指で直接塞ぐのではなく、金属のキーシステムにより延長されたパッドで塞ぐようになっていました。
一般的に、教材として各自が購入するのはソプラノとアルトだけであり、テナー以下やソプラニーノ以上は需要が小さく、単価も高くなりがちです。前述のアンサンブルで使ったテナーとバスも学校の備品でした。テナー(C管)のほうは樹脂製で、右小指のみ延長キーが付いているタイプ。このタイプは6〜7千円程度ですが、木製のバスリコーダーは5〜6万円と一気に高くなります。なぜテナーが樹脂製なのにバスが木製だったのかは謎です。もしかしたら、まだ樹脂製バスリコーダーが開発されていなかったのかも?
楽器の常として、突き詰めるとキリがないというのはリコーダーも同じで、木製リコーダーの値段は天井知らず(やや大袈裟)です。教材としてのリコーダーは、メンテナンスフリーであり、大量生産可能(=安価)なことが求められるため、いまのところ樹脂製しか選択肢がありません。しかしソプラノとアルト、特にアルトについては、バロック式のみラインナップすれば良いという開発効率の良さから各メーカーとも力を入れており、ゼンオン G-1A のような意欲的なモデルも登場しています。ゼンオンとは対照的に、スズキの樹脂製アルトはARE-711だけしかなくて寂しい感じです。